エピローグ
2008年10月22日(水)00:27 投稿者 マギー
昨夜、夢を見た。
夢の中で目覚めると、そこは自分の部屋のようだが、楽屋のようでもあった。
何故ならそこにはモニターがあり、聞いたことのない台詞が聞こえていた。
そこで夢の中のオレは本番中の楽屋でうたた寝をしてしまったことに気付く。
そしてなんともう数秒後には出番のきっかけ台詞が近づいてることにも気付く。
しかも着替えて出なきゃいけないのに、まったく着替えてない。
慌ててクローゼットをあけるとスーツが入っている。
どうやらいつものきっかけ台詞でスーツを着て出る、そんな舞台の本番中のようだ。
バタバタ焦るオレ。モニターからきっかけ台詞が聞こえた。
ダメだ。間に合わない。
オレはYシャツとネクタイだけ締め、ズボンは履かずに持ったまま楽屋を出る。
舞台上がシーンとした間(ま)になっているのがわかる。5秒、6秒・・・10秒、沈黙が聞こえる。
今から出ればどうしたってオレが間違えたのが客にはバレるだろう。
しかし芝居を止めるわけには行かない。
大丈夫、どうにかする。ハプニングを笑いに変えてやる。
夢の中でそう決心し、舞台に飛び出る。
シーンとした中にズボンを履いていない俺が登場する。
客席も共演者もシーンとしたまま見ている。
ズボンを履かないで出ればそこそこウケると思ったとっさの選択が早速外れる。
「どうも!ビジネスマンです」いつもは出てきてそう言うと爆笑のシーンのようだ。
夢の中のオレは機転をきかす。
「どうも、朝のビジネスマンです。ビジネスマンのなりかけです」
シーンとしている。泳いだ視線が客席でじっと見ているお客さんの目と合う。冷や汗がほとばしる。
夢の中のオレはまだ立て直そうとする。
ズボンに片足を通して「今、ビジネスマンになりかけかけです」
何故夢の中のオレはそれを選んだのか全くわからないが、“かけかけ”という箇所に力を入れて面白そうに言ってみた。
とてつもなくシーンとしている。
観念したように素で笑って誤魔化してみるが、それでもシーンとしている。
もうどうにもならない。
そこで目が覚めた。
なんだこの夢は。もう本番から開放されたってのに。
本番中に毎回デトチリ(舞台に出るきっかけで出ないこと)の恐怖にさいなまれてたわけでもないのに。
書いてても今、手に汗がびっしょりだ。
なんでこんな夢、見なきゃいけないんだ。
ひとつだけ思い当たる節があるとすれば。
実は「シャープさんフラットさん」の千秋楽間近に、一度、とある小道具を持って出るのを忘れたことがあった。
舞台上で一瞬ヒヤっとしたものの、背中に一筋の冷や汗を流したものの、
その場はなんとかアドリブで、むしろ笑いはいつもより多めで乗り切った。
ピンチも笑いに変えたった、ギリギリセーフや。
・・・と、どこかで思っていた。
とんだ勘違いだ。忘れた時点で惨敗だ。大惨敗だ。
そんなオレに、脳が「お前ふざけるな!ボケ!」と見せた映像だったのだろう。
脳に戒められた。
どうにかなる、なんてない、と。
笑いを舐めるな、と。
辻煙が見せたのか。
オレだけの「シャープさんフラットさん」エピローグ。